【歯周病に重視されるメンテナンス】

北欧のスウェーデン、イエテボリ大学は、現代歯科医学のトップランナーです。うさぎを使った骨の治癒の研究中に偶然、チタンが骨に癒着することを発見。現在主流のチタンによるインプラントが生まれました。生みの親がブローネンマルク先生は整形外科医で、イエテボリ大学の教授です。今流行の再生治療の中でも臨床的に頻度が高く用いられるエムドゲイン(骨再生治療薬)が開発されたのもこの大学です。このような世界でもトップレベルにある大学においても、”メンテナンス”は歯周病治療において大変重要なステージであると認識されています。

【2年間の研究で立証された重要性】

1970年代、イエテボリ大学歯周病科には、リンデとニーマン先生は評判の高い開業医でありましたが、大学で臨床研究に携わっていたリンデ教授に三顧の礼をもって迎えられました。後に、この2人のコンビは当時まだ確立されていなかった歯周病の治療で数々の偉業を成し遂げていきます。その中の一つ”メンテナンスの重要性”は、このニーマン先生によって位置づけられたと言ってよいでしょう。一般的に欧州においても歯周治療は、「終了すればサヨウナラ。何かあったら来てください。」というのが普通の感覚としてとらえられていました。ニーマン先生は、役所に以下の研究を認めてもらうように申請しました。歯周治療が終了して、2週間おきに2年間メンテナンスを行なってきたグループと、治療終了後、サヨウナラをしていた人たちを2年後に集めて、その後2つのグループにどのような違いが出てくるかという研究でした。役人はニーマン先生に聞きました。「このサヨウナラの人たちは2年後にはいったいどうなっているのでしょうか?」ニーマン先生は、「メンテナンスをしてきた人たちに比べて、ひどい結果になるでしょう。」と答えました。役人は唖然とし、そんな研究は認められませんといったそうです。しかし、ニーマン先生は、「現在、歯周診療において世界中で、このサヨウナラはあたりまえのこととして行われています。ですから、メンテナンスの重要性をわかってもらうため、どうしても必要な研究なのです。」と説き伏せました。研究の結果は、ニーマン先生の予想どおりのものでした。

【かかりつけの歯科でぜひメンテナンスを】

メンテナンスでは、何ヶ月かおきに、主に、歯肉のチェックやバイオフィルムの除去が行われます。しかし、残念ながらメンテナンスを行なっていてさえも、全ての方に100%の予後が保証されるものではありません。むし歯や歯周病は、人により感受性が異なりますので、そこに、一言では、くくれない難しさがあるのです。しかし、メンテナンスは大切ですから、ぜひ、ご自分のかかりつけの歯科医院で定期的に診てもらい、「”8020″80歳で20本の自分の歯」の目標を達成させましょう。